さて、自分探しの旅ならぬ文字探しの旅として芦屋駅にやってきました。それではご覧ください、これまでとはまた違う駅入口の駅名標を。どうでしょう、青くないですね。自分探しの旅など無意味であると知り、ひとつオトナになった自分のことが? いいえ、青くないのは駅名標のデザインの話です。芦屋駅など一部の駅では、英字表記の部分に敷かれていた青地が消え、全体が白くなっています。

これはいったいどのような理由があってのことなのでしょう。「えきもじの見索」京阪電鉄編でも同じような事例が見られましたね。京阪電車では景観条例による色彩制限であるとの説を立てましたが、阪神電車も同様に景観条例による制約でしょうか。それを裏付けるヒントとして、芦屋市内にある芦屋駅と打出駅はいずれも白い駅名標であり、芦屋市内になんらかの制約があるものと推測できます。実際、芦屋駅は「芦屋川特別地域」という屋外広告物規制地域に該当しています。なお、駅名標は広告物にあたるのかという点に関しては、京阪電車の駅名標と景観条例の関連をリサーチした際に、「屋外に設置されているものはすべて広告物と見なされる。」との回答を役所より得ていますので、この説が有力です。と、うまく片づけたかったのですが、実は西宮市内にある久寿川駅にも白い駅名標が存在します。これはもう分かりません。阪神電車の広報の方に直接お尋ねしたい案件ではありますが、あいにく車のクラクションを一度も鳴らしたことのないような小心者でございますので、識者の報告を待つことにしましょう。

さてさて、長々と見索をしているつもりで、気づけばまだ駅入口の駅名標の話しかしていません。駅の入口にある看板の文字とデザインの話だけで朝まで盛り上がれる方と、おいしいお酒を飲みたい今日このごろですが、悲しいかな電話帳の登録件数が25件、そのうちほぼすべてが仕事の連絡先というつまらない人生を送っている筆者には夢のまた夢。山陽姫路発、阪神なんば線経由、近鉄賢島行き特急の実現ほど夢に近い叶わぬ話でございます。残念です。それでは次に、神戸市内の地下区間に存在する駅入口の駅名標も見てみましょう。あともう少しだけお付き合いくださいませ。

英字表記にご注目ください。これまで路線名はVerdana Bold、駅名はVerdana Regularと、用途によってウェイトが使い分けられていましたが、こちらはどちらもBoldです。駅舎壁面に大きく設置された駅名標と違い、地下ホームへの入口建屋に設置された小さいサイズの駅名標であるため、筐体の縦幅を考慮して視認性を確保するために駅名表記もBoldになっているのでしょうか。たしかに、このサイズ感でRegularは少し見にくいかもしれません。ウェイトのチョイスも臨機応変に、ということですね。もしかしたら単なるミスという可能性もありますが、そうやって粗ばかりを探すのは悪い癖です。ミスチルの桜井さんも、とある曲でこう言っています。「時代とか社会とか無理にでも敵に仕立てないと味方を探せない」と。しかし今回は駅名標の文字ひとつからいろいろなことを考えさせられ、もし筆者が教養学部の学生であるならば、「文字と人生」というテーマで論文を書きたくなるような案件ですが、そんな高尚な考えに頭を巡らせることや、世の中を見聞し憂いてみても、問題は今日の雨...。

傘がない。

実は大開駅の取材時も突然の雨に降られ、傘がない中、身を挺してカメラを守る「自分より機材」スタイルでズブ濡れになりながら撮影をしていましたが、東京在住の筆者にとって地方ロケでの雨天は「また晴れた日に撮り直そう」ということが簡単にできないので、なんとも辛い話です。さぁ、そろそろ話題を変えましょう。駅名標は駅名標でも駅入口の駅名標ではなくホーム用駅名標の話に。でも、すみません。最後にこれだけ紹介をさせてください。おそらく数十年前から存在しているであろう、味のある文字。これを見なければ次に行けません。

行かなくちゃ、文字に会いに行かなくちゃ。

その名の通り武庫川の川の上にある武庫川駅ですが、駅舎の目立たぬ部分にいまだ残されている「阪神電車 武庫川」の文字。なんとも素敵な雰囲気ですね。「電」や「武」の字もさることながら、全体的に少し右上がりな造形が最近ではなかなかお目にかかれない文字であり、現代人にとって古さが逆に新鮮味を帯びた、新しいラプソディー...、新しいデザインで個人的には大好きです。

もう井上陽水を聴きながら記事を書くのはやめますね。

「赤胴車」と言えばの代表格でもあった3000系。少しイカつい顔ではあるものの、左右対称の中央貫通扉におでこの前照灯と「THE鉄道車両」と言っても過言ではない正統派。阪神電車初の界磁チョッパ制御車としてデビューし阪神大震災も乗り越えたが、2003年に惜しまれつつも引退。(撮影時期不明)

なんば線と呼ぶよりも西大阪線という名称に愛着がある方も多いのでは? 今でこそ阪神電車の二大幹線のひとつとなったなんば線も、なんば延伸前は尼崎と西九条を4両編成の電車が行き来するローカル色漂う路線。歴史にifはないが、ミナミではなく中之島へ向かい京阪直通という妄想も炸裂する。(撮影時期不明)

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