突然ですが覚えていますか? 英字書体のVerdanaについてはのちほど、と書いたことを。これまで日本語書体ばかりに注目をしてきましたが忘れてはいけないのが英字書体、Verdanaです。別にVerdanaが嫌いというわけではありません。もしかしたらちょっとだけ嫌...ってなんかいません。書体にはそれぞれ好みがあります。好きではない書体は取り上げないなんて、そんな身勝手な話はありません。Verdanaを取り上げるのが最後のページになってしまったことには理由があります。なぜなら、おもしろいものを発見してしまったからです。とっておきのものは最後まで残しておくスタイル。お弁当のおかずを食べる順番みたいなものですね。そう、お弁当で思い出したのですが、筆者はイカやタコなどのウネウネした無脊椎動物が食べられません。小学生のころ、お弁当に入っていたイカを口に入れたままいつまでも飲み込めず、担任の先生に「トイレで吐き出して流してきなさい。」と言われイカを吐き出したことがあります、男子用小便器に。流れるはずもないイカを先生が手づかみで大便器に移し替えていたシュールな光景は今でも忘れることができません。

と、そんな話はどうでもいいのです。阪神電車の駅のホーム上に存在する謎のシルバーのボックス。ロッカーのようにも見えますね。なにやら側面に「Storage Box」と書いてあります。おそらく清掃用具やマジックハンド(拾得器)などが入っているのでしょう。もしかしたら「嘔吐が消える」というシャレで鉄道現業職のみなさんにはおなじみの吐瀉物処理用薬品、オートキエールも入っているのでしょうか。しかし、いくらオートキエールでも、抽象的なアート作品のごとく小便器に鎮座した固形のイカは消えそうにありません。それでは「Storage Box」と書かれた部分を拡大してみましょう。

駅名標や番線標の英字表記などと同じく「Storage Box」の書体にもVerdanaが使われています。サインシステムだけでなく、備品も書体が統一されているのですね。弧を描いた配置に、白字の頭文字「S」と「B」がいいアクセントとなっていて、かわいらしいデザインですが、どうもこの書体、どこかで見覚えがあります。海外の大型家具を彷彿とさせるロッカーのような箱に記されているからこそ思い出してしまう、アノお店があるのです。

そうです、スウェーデン発祥の大型家具店IKEAです。なぜIKEAを連想させるのか。ロゴの下に書かれた「Home furnishings」の書体をご覧ください。この書体もVerdanaです。ただしウェイトが違いますね。「Storage Box」と同じBoldのものを探してみましょう。

ありました。「IKEA FAMILY」の書体が「Storage Box」と同じ、Verdana Boldです。実は「Storage Box」に限らず阪神電車のサインシステムにおける英字表記で採用されているVerdanaは、IKEAの指定英字書体と同じなのです。阪神電車の「えきもじ」から香る北欧の風。いや、IKEAの店舗から香る大阪の風。日々、身のまわりにある書体を観察することで思わぬ発見や共通点に出会うことができますね。せっかくの機会ですしIKEAのサインも見索してみましょう。

メイリオとVerdana...。メイリオ...、Verdana...。と、デザイナーや文字好きであれば、この書体の組み合わせにモヤモヤしてしまう方も多くいらっしゃるかと思いますが、それはさておき、阪神電車とIKEAではロゴGに新ゴとメイリオという日本語書体の違いはあるものの、Verdanaといい青地のサインといい、なんだかIKEAが阪神電車のサインシステムに見えてきました。ということは逆に阪神電車の駅に置いてある「Storage Box」がIKEAでも...?

もうIKEAの商品にしか見えません。自分だけの阪神電車、自分だけの「Storage Box」欲しいですね。実生活でも意外と役立ちそうなアイテムです。鉄道会社のオフィシャルグッズは多々あれど家具の商品はないように思います。ここはぜひ個性あふれる阪神電車にオフィシャル家具を販売していただきたく、数%の望みでありながら「中の人」へ伝わることを願って「えきもじの見索」阪神電鉄編、終了です。お疲れさまでした。

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