なにかを好きになるということは、そのなにかを手に入れたいというのが人間の性。鉄道好きも例外ではなく、実際に鉄道で使われていた備品や掲示物を手に入れることで、ホンモノを身近に置けるという喜びがあります。筆者ももちろんその中の一人。京急では年に一回、毎年春に久里浜で開催される「京急ファミリー鉄道フェスタ」で、実際に使われていたさまざまな備品や掲示物をはじめ、電車の座席やドア、運転台のマスコンまでを手に入れることのできるチャンスが訪れます。実際、筆者の自宅にも行き場を失った800形の運転台メーターパネルが無造作に床に鎮座しております。

鉄道好き以外にはなかなか理解されにくい、いわゆる廃品ではありますが、以前実家の京急グッズを整理していた際に発掘した2世代前の路線図に京急の駅名標書体が使われていることを発見し、迷わず自宅へカムバック。おそらくこの路線図でしかお目にかかることのできない駅名標書体の仮名表記「ご案内」の「ご」の字を確認することができます。これはとても貴重です。

駅名標書体が使われた「京急停車駅ご案内」もそうですが、京急ファンとしてはかつての急行(通称逗子急)や通勤快特にエアポート特急など、思わず「懐かしい!」と叫んでしまいたくなるような要素がズラズラ。その後、1999年7月の歴史的な白紙ダイヤ改正によって、急行、日中の特急、エアポート特急、通勤快特が廃止され、日中は普通と快特の2本立てに。そして再び急行がエアポート急行を名前を変えて復活し、現在の運行形態となっています。「えきもじ」ではありませんが、1999年当時の「KEIKYU INFORMATION ダイヤ改正特別号」もチラッとお見せしましょう。とても17年前(2016年現在)とは思えない、かわいくて洗練されたデザインが印象的です。当時、知り合いがこんなことを言っていました。「京急は広報誌はオシャレなのに電車はボロいのね。」いいえ、ボロくないです。味があると言ってください。

さて肝心の駅名標書体ですが、京急ファンの願いとしては駅名以外の文字も収録した「完全フォント化」です。駅名に出てくる文字であれば駅名標を撮影した写真をPC上でトレースをすることによって再現できますが、それ以外の漢字や仮名は己の想像力に任せるしかありません。しかしなにか参考になる文字が欲しいと思いませんか。そんな京急駅名標書体再現クラスタのみなさんに朗報です。「KSゴシック体字典」というレタリング集をご存知でしょうか。現在ではなかなか手に入りにくい本ではありますが、このKSゴシック体の文字の造形が駅名標書体と似ているため、こちらのレタリング集を参考にフォント化作業を進めると、非常に効率良く駅名以外の文字も作ることができるのです。効率が良いと言っても2792字もあるのですが...。

レタリング集は文字好きにとっての「エロ本」。いくらめくっても文字しか出てこない最高のオカズ。これだけでご飯3杯は行けますね。あ、オカズってご飯のオカズのことですよ。なに変なこと考えてるんですか?

もちろん駅名標書体とまったく同じではなく雰囲気が似ているという程度ですので、そのままトレースをしても縦横比や斜体にした際にバランスが崩れるなど調整すべき箇所は多々ありますが、「雰囲気」という点だけでも参考になります。ぜひどなたか、この「KSゴシック体字典」を参考に京急駅名標書体の完全フォント化をお願いいたします。もしクラウドファンディングでフォント化のための費用を募るのであれば、万は出します。たぶん。逆に数年間は食うに困らない費用をいただければ私鉄ゴシックにつづく「もじ急行」の目玉企画として完全フォント化を目指し...、たいのですが、京急電鉄さんの許可も必要ですね。

中の方...、聞こえていますか...、駅名標書体を商品化しませんか...。鉄道会社が書体を販売する...、間違いなく話題になりますよ...。

と、高輪に向かって念を送ったところで、つづいてはホーム用駅名標の見索へとまいりましょう。こちらももちろん駅入口の駅名標と同様に新旧合わせてご紹介いたします。日常生活でまったく役に立たない「絶対フォント感」も鍛えることができるはずです。ぜひ目を凝らしてご覧ください。

京急久里浜線の終点三崎口駅には、これまでに紹介した駅名標書体と同じ文字でありながら、ブルーのサインではなくネオンサインの「三崎口駅」が設置されていたことは京急ファンの中でも有名な話。周囲に建物があまりないため、夜になると暗闇の中でボワっと光る赤い文字が少しだけ不気味? (2003年撮影)

西の「中之島要塞」、東の「蒲田要塞」とも言われる京急蒲田駅も元々は2面3線のこぢんまりとした地平駅。今では見ることができなくなった駅名標書体の「京急蒲田駅」に、時の流れを感じる。いまだに京急蒲田駅と言えば駅前にケンタッキーがある小さな駅舎を思い出す方も多いのでは? (2003年撮影)

地上時代の京急蒲田駅と言えば忘れてはならないのが空港線が第一京浜を横切る「箱根駅伝の踏切」。この踏切をランナーが走り抜けるシーンは京急ファンにとって正月の風物詩。電車が来てランナーが立ち往生しないよう一部の空港線直通列車は京急川崎行きに変更されるなど、臨機応変な対応も。(1999年撮影)

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