「えきもじの見索」のメインと言ってもいいホーム用の駅名標ですが、まずは手始めに新旧の書体とデザインを比較してみることにします。そう、手始めです。このあと現れる「沼」の存在に期待を膨らませながら...。

書体はどちらも同じような文字の造形ですが、新タイプの駅名標は新ゴ、旧タイプの駅名標はゴナを使用しており若干字形が異なります。新ゴとゴナの比較については「えきもじの見索」名古屋市営地下鉄編でじっくりと比較をしていますので、そちらも合わせてご覧ください。

デザインは旧タイプが白地に紺色の文字であるのに対し、新タイプでは紺地に白抜き文字と逆転をしています。基本的な構成はどちらも同じではありますが、新タイプのデザインには進行方向を示す矢印がついたことによって、次の駅がより分かりやすくなりました。旧タイプの切れ込みもスピード感があって京急らしいですね。それでは次に新タイプの駅名標におけるさまざまなバリエーションをご紹介します。大丈夫です。まだ沼ではありません。

はじめに副名称付きの駅名標です。京急では2013年からネーミングライツによる副名称を販売しており、梅屋敷駅の「東邦大学前」を皮切りに、新馬場の「寺田倉庫前」、穴守稲荷駅の「ヤマトグループ 羽田クロノゲート前」、京急鶴見駅の「ナイス本社前」(その後「京三製作所本社」に変更)、そして横浜駅の「そごう・ポルタ前」と、法人名や施設名を駅名標下部中央に表記しています。東急や京王などでは駅名標とは別に副名称専用の表示枠を既存の駅名標に隣接する形で掲出していますが、京急では駅名標内に副名称を収めており、副名称が変更になると駅名標自体を交換しなくてはならないデメリットがあるものの、非常にスッキリとしたデザインです。これは東武や京阪でも見られる表記方法ですね。

もしも秒速で一億稼ぐような男になったのであれば、学生時代によく遊んでいた平和島駅に「青春の思い出前」と名付けたいところではありますが、どうやら法人や公共性の高い施設に限定されているようです。つまり平和島駅周辺に「株式会社青春の思い出」を設立すれば実現が可能になるということでしょうか。株式会社青春の思い出...、なんだかウケを狙った寒いクリエイティブカンパニーみたいで嫌ですね。どこ、というわけではありませんが。いやホントに。

つづいては分岐駅です。JR東日本や京成の駅名標などに見られるようなラインカラーが二股に分かれているタイプではなく、次駅名を上下二段に配置したデザインで標準的な駅名標とともに見た目の統一性が図られています。また、仮名が「けいきゅうかまた」と連続して表記されているのではなく「けいきゅう_かまた」というように「けいきゅう」と「かまた」の間にスペースが開けられているため、可読性が良い表記方法と言えるでしょう。しかし残念ながらとある映画の世界では、京急蒲田駅の下を流れる呑川に出現した巨大不明生物によってなんらかの被害を受けてしまった模様です。無念。

その巨大不明生物こと映画「シン・ゴジラ」の撮影には京急も全面協力。八ツ山橋(左)や800形の車両(右)を見るたびに、あのシーンを思い出してしまう方も多いのでは? ちなみに八ツ山橋を渡るシン・1000形には巨大クマさんが。

次に羽田空港国際線ターミナル駅ですが、こちらは駅名が長いのと隣接する羽田空港国内線ターミナル駅との区別を容易にするためか、自駅名自体が二段組みとなっており「国際線ターミナル」が強調されています。正式名称が「羽田空港国際線ターミナル」でありながら後半の「国際線ターミナル」を立たせたデザインに、近鉄の「大和八木、八木でございます。」や、阪神の「センタープール前、尼崎センタープール前です。」という関西私鉄的雰囲気を感じるのは自分だけでしょうか。そして国際線ターミナル駅では、英字表記をメインとした珍しいタイプの駅名標もお目にかかれます。かっこいいですね。むしろ日本語表記はいりません。Frutigerだけのシンプルな駅名標が見たいです。と、見た目のかっこよさ重視で英字だけにしてしまうのはデザイナーのエゴでございます。

線路側の壁面には「国際線」とだけ表記された非常にシンプルな駅名標も(右)。駅番号の導入に日英中韓の4ヶ国語表記など、年々複雑になって行く駅名標のデザインに一石を投じる大胆さは、ニューヨークの地下鉄っぽい? (左)

国際線の次は国内線です。こちらはこれまでの紺地に白抜き文字ではなく、旧タイプの駅名標と同様に白地に紺色の文字のデザイン。新タイプのサインシステムが登場した当初は京急蒲田駅や梅屋敷駅、大森町駅、雑色駅でもこのような白地タイプの駅名標を見ることができましたが、現在はほぼすべての駅が紺地のデザインとなっており、白地の駅名標は2016年10月現在で羽田空港国内線ターミナル駅と天空橋駅の2駅を残すのみとなりました。おそらく空港線内における駅名標のカラーに関しては、天空橋駅、国際線ターミナル駅、国内線ターミナル駅と駅がつづく中で、誤って下車してしまうことを防ぐために駅名標のカラーを変えているのでしょうか。羽田空港駅(現羽田空港国内線ターミナル駅)の開業に合わせ羽田駅が天空橋駅に改称され、天空橋駅での誤った下車はないようにも思えますが、きっとなんらかの理由があるのでしょう。もしくは将来的に紺地の駅名標に交換されるとも考えられます。

最後にその天空橋駅ですが、国内線ターミナル駅とは若干色合いが異なるようにも見えますね。もちろん写真の明るさや駅構内の照明の違いなどもありますが、ラインカラーや左上の「KEIKYU」ロゴなどに顕著に違いが見られます。

しかし「天空橋」とはこれまたかっこいい駅名です。東の天空橋、西の喜連瓜破(きれうりわり)と言ってもいいのではないでしょうか。英語に直訳すると「Heaven's sky bridge」です。バンドマンのみなさん、グループ名にどうですか。「ヘヴスカ」ですよ、「ジュンスカ」みたいでしょ。

紆余曲折を経てようやく念願の羽田空港ターミナル直下へと乗り入れを果たしたのは、世間がノストラダムスで騒いでいた1998年のこと。「京急、搭乗。」というコピーの大胆な広告に、一躍「空港アクセス路線、京急」の印象を知らしめた。駅名標は「羽田空港」のみの表記である。(1998年撮影)

空港線はその名の通り羽田空港へのアクセス路線であるが、同時に穴守稲荷への参拝路線でもあることは、空港線開業当時の名称が穴守線であったことからも伺える。地上時代の京急蒲田駅には「穴守稲荷のりかえ」と書かれた江戸文字風の大きな看板が、駅のシンボルともなっていた。(1998年撮影)

羽田空港ターミナル直下への乗り入れ開始以前は羽田駅(現天空橋駅)が終点であったため、ターミナルへはモノレールに乗り換える必要があり、空港アクセス路線としての役割はほとんど担っていなかった。その印象が強いためか、いまだに空港線と言えばゲンコツと羽田止まりのイメージも? (1998年撮影)

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