DIN DIN 心魅かれてく

さっそく新しきを新しく、古き良きを現代に生かす駅入口の駅名標についてですが、2017年3月現在、京成線では旧デザインから新デザインへのサイン移行作業が終盤を迎え、多くの駅では新しいタイプの駅名標に交換されながらも、一部の駅では旧デザインの駅名標が残っています。いずれもブルーをベースにしたデザインですが、新しいデザインは濃いめのブルー。相鉄になぞらえ「KEISEI NAVY BLUE」とでも呼びましょうか、デザイン自体はシンプルながらも英字表記で使われている書体と「京成電鉄」と書かれた独特なロゴタイプに、もじ鉄としてはニヤケ顔がとまりません。

日本語書体は近鉄や静岡鉄道などの駅名標でも使われているイワタUDゴシック。昨今増えつつあるUD(ユニバーサル・デザイン)書体の中でも初期に登場したものであり、どこか無機的でシステマチックになりがちなUD書体でありながら柔らかな印象を兼ね備えた造形です。ちなみにこのイワタUDゴシックは視認性に重点を置いた「表示用」と可読性を重視した「本文用」の、それぞれ役割が異なる2パターンが存在します。

違い、分かりますか。「タ」や「ク」の字を見ると分かりやすいですね。本文用は上部のラインが若干突き出しています。そのほかにも文字によっては曲線の造形が異なっていたり、サイズ自体も本文用は表示用に比べて少しだけ小さくなっているなど、漢字だけでは判別が難しいですが仮名に違いを見ることができます。京成のサインシステムで使われているイワタUDゴシックは、仮名が使われている「ユーカリが丘」の表記を見る限り表示用のものであると考えていいでしょう。

 

そして京成線のサインを語る上で外せないもっとも大事なポイントは英字書体のDIN(ディン)。元々はドイツの工業規格書体として生まれたものであり「Deutsche Industrie Normen」を略してDINとされています。この書体、とても素敵だと思いませんか。DIN DIN 心魅かれて行きませんか。

ドラゴンボールGTはドラゴンボールとして認めない。とか言わないの。

写真 _ ShutterStock

DINはドイツの道路標識で使われている書体としても有名であり、縦長の造形となっているコンデンスド書体のDIN Condensedや、丸みを帯びたDIN Roundedをはじめ、既存のDINをリニューアルし、ファミリーを拡大させたDIN Nextなど、さまざまなバリエーションが存在する世界的に人気の書体。もちろん日本でも大流行し、サインだけでなくあらゆる広告媒体などでも目にすることができます。

 

筆者も仕事やプライベート(?)でDINを多用し、一時期はDINの使いすぎから「DIN離れ」さえあったものの、京成線のもじ鉄めぐりをしている中でDINの魅力を再発見。まるで浮気をしても帰りたくなる「やっぱお前が一番やねん」な書体とでも言いましょうか。スティッチのハンドルカバーにルームミラーからぶら下がっている大麻のような形の芳香剤が印象的な改造車の車内から聴こえてきそうなラブソングにありがちなアレです。

広告で使われているDINの一例。アルファベットの造形もさることながら数字の美しさはピカイチ。ウェイトももっとも細いThinから力強い太さのBlackまでバリエーションが豊富だ。

さてさて、DINが魅力的な京成線の駅名標ですが、注目すべきポイントはDINだけではありません。「京成電鉄」のロゴタイプも要チェックです。

近年のCI(コーポレート・アイデンティティ)リニューアル計画などによって徐々にその姿を消しつつある往年の直線的なロゴタイプ。「もじ急行」でも同様の書体を「私鉄ゴシック フォント化プロジェクト」と題しフォント化作業を進めているのですが、サインシステム移行に伴い消えてしまう、またはデザインを変えてしまうものと予想していたこのロゴタイプが新しい駅名標に登場。まさに新しきを新しく、古き良きを現代に生かす素晴らしいデザインです。そう、なんでも新しくしてしまえばいいというものではないのですね。長年使われてきたロゴタイプに対する京成電鉄の愛を感じます。

 

しかしここでひとつ気づくことはありませんか。駅番号の書体にご注目ください。最初にご紹介した京成八幡駅の駅番号と異なる部分が存在するのです。

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文・写真 _ 石川祐基 | 公開日 _ 2017.03.30

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