隠された役割

新しいデザインの駅名標についてですが、まずはいつも通りどのような書体が使われているのかをチェックしてみましょう。前回の「えきもじの見索」京急電鉄編の公開時期に発売された雑誌、月刊MdN 2016年11月号「絶対フォント感を身につける。2」にて「もじ急行」が協力をさせていただきました特集コーナー「もじ鉄のススメ!」においても駅名標の見方として成田駅を例に取り上げておりますので、こちらをご覧いただけた方は既にご存知かも知れませんが、今回の記事ではそこで紹介しきれなかった京成ファンの間で話題となっているアノ問題についても徹底的に調査します。

まず書体チェックです。基本的には一番最初にご紹介した駅入口の駅名標と同じくイワタUDゴシックとDIN、そして駅番号の路線記号「KS」にはDIN Condensedが使われていますが、自駅表記下部には中韓表記が追加されていますね。デザインも旧デザインの流れを汲む白地にブルー系のラインで、これまでの駅名標がより洗練された印象です。

 

注目すべき点は文字の「揃え」。仮名、漢字、英字、中韓表記がセンタリングされているのではなく駅番号側に寄せた右揃えの表記方法です。これは中央揃えの多い、ほかの鉄道会社ではあまり見られない珍しいもので、京成線の駅名標の一番の特徴と言ってもいいでしょう。そんな「揃え」についてファンの間では賛否両論、双方の意見を耳にすることが多いのですが、実は駅番号の位置と文字の揃えには隠された役割が存在するのです。

こちらは幕張駅上りホーム側の駅名標ですが、先ほどの西船駅とは駅番号の位置が異なりますね。文字の揃えも右揃えではなく左揃えになっています。いったいなぜでしょう。ヒントは進行方向にあります。

 

次駅表記の矢印の位置にご注目ください。西船駅の写真は矢印が右側、よって駅番号も右側。幕張駅の写真は矢印が左側、同じく駅番号も左側。つまり進行方向によって駅番号と文字の揃えの位置関係が変動するのです。思わぬ発見ですね。普段利用している分には少し気づきにくい問題ではありますが、この位置関係の違いを知ることによって電車がどちらへと進むのかが一目瞭然。そんなものは矢印をもっと大きく表示すればいいじゃないかという意見も聞こえてきそうですが、矢印を大きくすることで余白の美を生かしたデザインが崩壊してしまいそうな気もします。まぁ、あくまでもデザイナー側の視点に立った意見ではあるのですが、あらゆる試行錯誤と検証を繰り返した上で採用されたであろうデザインのことですから、筆者のようなサインデザイン未経験者があれこれといじくり倒し「ぼくがかんがえたさいきょうのえきめいひょう」を作っても、きっとどこかでおかしな部分が生じてくることでしょう。でもいつかは「ぼくがかんがえたさいきょうのえきめいひょう」を作ってみたいものです。全国の鉄道会社さま、ここはひとつ「もじ急行」に...。

という営業でした。

つづきましては月刊MdN内でも例として取り上げた成田駅の駅名標ですが、こちらは成田空港方面と東成田方面への分岐駅であるため、ブルーのラインが二股に分かれています。

 

「二股」「わかれる」と書くと、もうその字面だけで炎上してしまいそうな昨今の世の中ではありますが、以前知り合いの結婚式に誘われた際に会場BGMの担当となり選曲を一任され、ふたりの大事な門出ということもあってか「結婚式で流してはいけない曲」というものを調査。中でも誤って曲を流してしまいがちな例として各所で取り上げられていたのは、大黒ふ頭で虹を見てシーガーディアンで酔わされるサザンの名曲「LOVE AFFAIR ~秘密のデート~」。歌詞をよく見ると浮気や不倫をテーマにしています。一生に一度の大事なシーンではこのように流す曲ひとつをとっても慎重に選ばなくてはなりません。筆者も愛を誓い合ったふたりのためにと熟考した上で、ホニャララの極み乙女というグループの曲を「小さな音量」で流させていただきました。きっと喜んでくれたことでしょう。

 

ちなみにサザンと言えば江ノ島。江ノ島と言えば江ノ電。そんな江ノ電の公式キャラクターの名前は「えのん」です。

えのんの短所は「おっちょこちょいなところ」だそう...。

次に高砂駅の駅名標ですが、こちらも京成本線と北総線との分岐駅であるためラインが二股に分かれているものの、先の成田駅とは違い他社線との分岐であるため北総線新柴又駅側のラインカラーがブルーではなくオレンジになっていますね。しかしこのオレンジは北総線というよりも成田スカイアクセス線のラインカラーでしょうか。

 

と、このように新デザインの駅名標は細めのラインと周囲の余白を生かした非常にシンプルかつ洗練されたデザインにイワタUDゴシックとDINの書体も相まって、これまでの京成線のイメージを良い意味で変えつつ、旧デザインの基本的な構成はそのままに現代へとアップデートした新旧が織りなす美しい駅名標となっています。しかし西船駅、幕張駅、成田駅、高砂駅と4つの駅名標を見てきた中で、どこかに違和感に覚えませんか。そう「えきもじの見索」東急電鉄編でも取り上げたアレです。

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文・写真 _ 石川祐基 | 公開日 _ 2017.03.30

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考察内容はもじ急行の見解に基づくものであり、実際と異なる場合がございます。また記載されている情報は特記事項を除き取材当時のものであり、現状と異なる場合がございます。