車両デザインができるまで

石川

 

 

三浦

1000系の車両デザインは基本的にシンプルだと思うんですけど、あまり個性が強すぎても...、という感じだったんですか?

 

そうですね、当初はフルラッピングの話もあったんです。ただ、地方色を出そう、個性的にしようとしたときに、できあがったときは目立って話題にもなるんですが、鉄道車両って車と違って何十年も使いつづけるものじゃないですか、だから飽きがくるものであっては困るんです。なのでシンプルで飽きがこない、なおかつ地域性が盛り込まれているデザインにしようということで小松さんとやりとりさせていただいて、最終的にこのデザインになったと。

石川

 

 

小松

 

 

 

 

石川

 

小松

 

石川

 

小松

 

 

 

石川

 

小松

 

 

 

石川

 

 

小松

 

三浦

 

小松

たしかに、何十年も使いますからね。ちなみにこの1000系をデザインするに当たって、参考にした車両はありますか?

 

参考ですか...、参考はですね...、正直なかったですね。新造車であれば形状までデザインできるので、それこそ流行りだったりいろんな車両をモデルにしたりできるんですけど、今回の1000系は譲渡車かつ中間改造だったので参考にした車両はなかったです。

 

正直、中間改造の顔を見たときの印象はどうでした?

 

正直に言うと単調だな、ってのはありました。

 

でもカラーリングによって印象は大きく変わりますからね。

 

そうですね、まずはこの中間改造の顔の印象を打ち消すことからはじまりました。この顔をカラーリングの力でいかにコーディネートするかによって、個性というかデザインが確立できるんじゃないかという確信があったので。

 

デザインは何パターンぐらい考えましたか?

 

前面は2パターンぐらいですね。ピーチフラワー、ダークブラウン、シャンパンゴールドの3色をどういう順列で配色するかという検討をしました。側面は3、4パターンぐらいですかね。あんまり作りすぎても...。

 

ですよね、選択肢が増えすぎちゃうと逆に選べなくなっちゃいますから...。ちなみにデザインが決まるまでにどのくらいの時間がかかりました?

 

配色自体は一ヶ月...。

 

そんなもんですねぇ。

 

あとはコンセプト作りにだいたい2週間ぐらいの短期決戦でしたね。

石川

 

三浦

 

石川

 

小松

 

 

 

 

三浦

 

 

 

石川

 

 

 

三浦

 

石川

 

 

 

小松

デザインの決定まで結構迷われました?

 

配色については絞られていたのですが、ラインの引き方とかは最後まで。

 

ラインの引き方というのは。

 

側面上部のピーチフラワーのラインの線幅ですね、あまり太すぎるとインパクトが出てしまってダークブラウンのレトロ感を打ち消しかねないということで、そこの線幅はmm単位で何回も検証しながら「もうちょっと細めに」「いや太めに」なんて結構ヒートアップして...。

 

実は社長と一緒に会議をしていたんですけれども、会議室の壁に実際の太さのものを貼って「これじゃ細い」とかそんなやりとりをつづけ、そのたび小松さんに「ここを直して」って何回もお願いを。

 

大変だ...。あ、くまモンのほっぺあるじゃないですか、あれも何百通りだったっけな? ちょっと忘れましたけど、大きさとか位置とかを壁に貼っていろいろ検討したみたいですね。聞いた話ですけど。

 

へぇー!

 

やっぱり頭の中だけじゃなく実際に貼ったりしてやってみないと分からないですからね、帯の太さも。パソコンの画面の中だけで考えてしまうと実際に出力したときに「思っていたのと違うな」ってあるじゃないですか。

 

はいはい、あります。

突然くまモンの雑学披露とかいらないから。

石川

 

 

 

小松

 

石川

 

 

 

小松

 

 

 

 

石川

 

 

 

 

小松

カラーの話ですと、このダークブラウンも濃すぎると黒っぽくなっちゃうし、明るすぎると...。難しいですよね、ちょうどいい感じっていうのが。特にダークブラウンの場合は。

 

難しいですねぇ、ちょうど絶妙な位置にあるカラーっていうのが。

 

1000系ですとワンポイントでダークブラウンというわけではなく、結構がっつり入ってるじゃないですか。この明度をちょっと変えるだけで、かわいらしい電車になるか、大人っぽい電車になるか大きく変わりますもんね。

 

そうですね、特に前面は多くの方の印象に残りますからねぇ。私もいろいろシミュレーションをしまして、陽に照らされたときの色の具合、晴れの日のパターンや夕暮れのパターンなどあらゆる条件を検討した上で、どんな天候、どんな明るさでも一番しっくりくるブラウンを....。

 

なるほど! 太陽の明るさによって変わりますもんね。いやぁこれは大変ですね。自分はグラフィックデザインの分野なんで、作るとしても紙媒体だったりテレビ番組の中のロゴだったりで、天候のことは気にしたことがなかったです。これは目からウロコです。

 

建築と同じですよね。僭越ながら私も10年くらい建築をやってきたものですから、どうしても天候や日照に左右される要素というものを叩き込まれていたので、どういうケースでも合うような色というものに重点を...。なのでこの配色はなかなか難しかったです。

石川

 

小松

 

 

石川

 

 

三浦

 

小松

 

 

 

 

石川

 

小松

ちなみに「いい電」のヘッドマークは最初から付けるということが前提で?

 

そうですね、前提でしたね。ヘッドマークを付けることで、いわゆる食パン顔に立体感を出して前面形状に変化を持たせようと。

 

じゃあこのヘッドマークは車両のデビューから何ヶ月間か掲出、というものではなく今後もずっと付けて走ると。

 

はい、そうです。

 

実はこのヘッドマークの形状もいろいろと検討をしまして、もっと小さいものや正円(丸)でも良かったんですが、楕円になっている理由は側面の社紋板にあります。東急さんで言えば「TOKYU CORPORATION」の赤いマーク、あの楕円の板と比率を合わせているんです。

 

そうだったんですね。

 

側面と前面の楕円の形状を合わせることで斜め45度から見ても美しく、規則性や安定感があって見えるように...。あとは前面のピーチフラワーのラインをあえて少し隠すことで前面の構成に変化を与え、さらなる立体感だったり、デザイン的に単調ではない顔にできればと思い、この形と大きさにしました。

石川

 

 

小松

 

石川

 

小松

 

 

 

 

三浦

 

石川

 

小松

 

石川

 

 

 

小松

先ほど見せていただいたデザイン案の中で前面のラインにRが付いているものもありましたが、ほかにはどのようなデザインが候補に上がりましたか?

 

最初はですね...、ほんとに最初の素案のときはブラックフェイス...。

 

もう完全にブラックフェイス?

 

はい、もう上までブラックフェイスで、イメージとしては横須賀線のE217系みたいな感じですね。で、下のほうはピーチないしレッドのライン、あとは既存の福島交通7000系で使われているブルーという案もありました。そのほかですと、ほとんど色を塗らずに白とピーチのラインのみとか...。

 

前面にほっぺを付けるという案もありましたね!

 

ほっぺ(笑)!

 

もう思いきってかわいくしちゃおうと(笑)。

 

それすごく見てみたいです! ただアレですよね、先ほど三浦部長がおっしゃられたように鉄道車両は車と違って何十年と使われつづけるものですから、普遍性のあるシンプルなもので...、ということで。

 

そうですね、少なくとも20年、30年と走りつづけるということを想定して、その中で地域に生きつづけるデザインとはどういうものなのか、っていうことを追求してきましたから...。まぁ自分自身で100点は付けられないデザインではありますけれども、日本の中でも屈指の地域に寄り添うことのできる車両ができたかなという自信はあります。

石川

 

 

 

小松

 

 

 

石川

 

小松

もともと小松さんは「描き鉄」として活動されていて、最終的には実車のデザインも手がけることになったわけですが、この1000系デザインの話を聞いたときはどんな感じというか...、やっぱり「よっしゃぁ!」って(笑)?

 

思いましたね、思いました(笑)。日本でも鉄道デザイナーって40名ていどという話を聞いていますので、今回はエクステリア(外観)のデザインだけだとしても鉄道デザイナーの中の一人に...、まぁなってしまったというか(笑)。

 

いやいや、すごいですよ。

 

その喜びの反面、鉄道車両、特に通勤電車の場合は地域に密着しなければならないデザインですから、とても難しいミッションでして、いかに地域の方に喜ばれて長く愛される車両を作るにはどうすれば良いかっていう...。まぁ、あるていど奇抜なものを作ればそれが「新しい」っていうのもあるかも知れませんが、通勤電車だとそういうわけには行かないので...。奇抜な車両をデザイナーの勝手で作ってしまうと地域を否定することにもなりかねず、鉄道に対する愛着の低下も招いてしまいますから、それだけは絶対に避けようと。地域を知って、地域を分かって、それを汲み取ってデザインをする難しさも知りましたね。

石川

 

三浦

 

石川

 

小松

 

三浦

 

小松

 

石川

この1000系はまた何編成か増備されるんですよね?

 

そうですね、最終的には6編成ですかね?

 

じゃあ1編成だけ先ほどの「ほっぺ付き」の車両を、イベント用として(笑)。

 

あー、それもアリですねぇ(笑)。部長、どうしますか?

 

ちょっと考え...、やるとはなかなか言いづらいんですが(笑)。

 

お試しで貨物のテールランプを(笑)。

 

飯坂温泉に浸かってほっぺが赤くなったよ、って(笑)。ぜひ遊び編成を1編成、ご検討よろしくお願いします...!

次のページへ

写真 _ ね子・石川祐基 | 公開日 _ 2017.04.22

いい電の、

いい文字。

えきもじの見索

京成電鉄編

えきもじの見索

京急電鉄編

擬もじ化フォント

GINZA_01

えきもじの見索

東急電鉄編

考察内容はもじ急行の見解に基づくものであり、実際と異なる場合がございます。また記載されている情報は特記事項を除き取材当時のものであり、現状と異なる場合がございます。

石川

1000系の車両デザインは基本的にシンプルだと思うんですけど、あまり個性が強すぎても...、という感じだったんですか?

 

三浦

そうですね、当初はフルラッピングの話もあったんです。ただ、地方色を出そう、個性的にしようとしたときに、できあがったときは目立って話題にもなるんですが、鉄道車両って車と違って何十年も使いつづけるものじゃないですか、だから飽きがくるものであっては困るんです。なのでシンプルで飽きがこない、なおかつ地域性が盛り込まれているデザインにしようということで小松さんとやりとりさせていただいて、最終的にこのデザインになったと。

石川

たしかに、何十年も使いますからね。ちなみにこの1000系をデザインするに当たって、参考にした車両はありますか?

 

小松

参考ですか...、参考はですね...、正直なかったですね。新造車であれば形状までデザインできるので、それこそ流行りだったりいろんな車両をモデルにしたりできるんですけど、今回の1000系は譲渡車かつ中間改造だったので参考にした車両はなかったです。

 

石川

正直、中間改造の顔を見たときの印象はどうでした?

 

小松

正直に言うと単調だな、ってのはありました。

 

石川

でもカラーリングによって印象は大きく変わりますからね。

 

小松

そうですね、まずはこの中間改造の顔の印象を打ち消すことからはじまりました。この顔をカラーリングの力でいかにコーディネートするかによって、個性というかデザインが確立できるんじゃないかという確信があったので。

 

石川

デザインは何パターンぐらい考えましたか?

 

小松

前面は2パターンぐらいですね。ピーチフラワー、ダークブラウン、シャンパンゴールドの3色をどういう順列で配色するかという検討をしました。側面は3、4パターンぐらいですかね。あんまり作りすぎても...。

 

石川

ですよね、選択肢が増えすぎちゃうと逆に選べなくなっちゃいますから...。ちなみにデザインが決まるまでにどのくらいの時間がかかりました?

 

小松

配色自体は一ヶ月...。

 

三浦

そんなもんですねぇ。

 

小松

あとはコンセプト作りにだいたい2週間ぐらいの短期決戦でしたね。

石川

デザインの決定まで結構迷われました?

 

三浦

配色については絞られていたのですが、ラインの引き方とかは最後まで。

 

石川

ラインの引き方というのは。

 

小松

側面上部のピーチフラワーのラインの線幅ですね、あまり太すぎるとインパクトが出てしまってダークブラウンのレトロ感を打ち消しかねないということで、そこの線幅はmm単位で何回も検証しながら「もうちょっと細めに」「いや太めに」なんて結構ヒートアップして...。

 

三浦

実は社長と一緒に会議をしていたんですけれども、会議室の壁に実際の太さのものを貼って「これじゃ細い」とかそんなやりとりをつづけ、そのたび小松さんに「ここを直して」って何回もお願いを。

 

石川

大変だ...。あ、くまモンのほっぺあるじゃないですか、あれも何百通りだったっけな? ちょっと忘れましたけど、大きさとか位置とかを壁に貼っていろいろ検討したみたいですね。聞いた話ですけど。

 

三浦

へぇー!

 

石川

やっぱり頭の中だけじゃなく実際に貼ったりしてやってみないと分からないですからね、帯の太さも。パソコンの画面の中だけで考えてしまうと実際に出力したときに「思っていたのと違うな」ってあるじゃないですか。

 

小松

はいはい、あります。

石川

カラーの話ですと、このダークブラウンも濃すぎると黒っぽくなっちゃうし、明るすぎると...。難しいですよね、ちょうどいい感じっていうのが。特にダークブラウンの場合は。

 

小松

難しいですねぇ、ちょうど絶妙な位置にあるカラーっていうのが。

 

石川

1000系ですとワンポイントでダークブラウンというわけではなく、結構がっつり入ってるじゃないですか。この明度をちょっと変えるだけで、かわいらしい電車になるか、大人っぽい電車になるか大きく変わりますもんね。

 

小松

そうですね、特に前面は多くの方の印象に残りますからねぇ。私もいろいろシミュレーションをしまして、陽に照らされたときの色の具合、晴れの日のパターンや夕暮れのパターンなどあらゆる条件を検討した上で、どんな天候、どんな明るさでも一番しっくりくるブラウンを....。

 

石川

なるほど! 太陽の明るさによって変わりますもんね。いやぁこれは大変ですね。自分はグラフィックデザインの分野なんで、作るとしても紙媒体だったりテレビ番組の中のロゴだったりで、天候のことは気にしたことがなかったです。これは目からウロコです。

 

小松

建築と同じですよね。僭越ながら私も10年くらい建築をやってきたものですから、どうしても天候や日照に左右される要素というものを叩き込まれていたので、どういうケースでも合うような色というものに重点を...。なのでこの配色はなかなか難しかったです。

石川

ちなみに「いい電」のヘッドマークは最初から付けるということが前提で?

 

小松

そうですね、前提でしたね。ヘッドマークを付けることで、いわゆる食パン顔に立体感を出して前面形状に変化を持たせようと。

 

石川

じゃあこのヘッドマークは車両のデビューから何ヶ月間か掲出、というものではなく今後もずっと付けて走ると。

 

三浦

はい、そうです。

 

小松

実はこのヘッドマークの形状もいろいろと検討をしまして、もっと小さいものや正円(丸)でも良かったんですが、楕円になっている理由は側面の社紋板にあります。東急さんで言えば「TOKYU CORPORATION」の赤いマーク、あの楕円の板と比率を合わせているんです。

 

石川

そうだったんですね。

 

小松

側面と前面の楕円の形状を合わせることで斜め45度から見ても美しく、規則性や安定感があって見えるように...。あとは前面のピーチフラワーのラインをあえて少し隠すことで前面の構成に変化を与え、さらなる立体感だったり、デザイン的に単調ではない顔にできればと思い、この形と大きさにしました。

石川

先ほど見せていただいたデザイン案の中で前面のラインにRが付いているものもありましたが、ほかにはどのようなデザインが候補に上がりましたか?

 

小松

最初はですね...、ほんとに最初の素案のときはブラックフェイス...。

 

石川

もう完全にブラックフェイス?

 

小松

はい、もう上までブラックフェイスで、イメージとしては横須賀線のE217系みたいな感じですね。で、下のほうはピーチないしレッドのライン、あとは既存の福島交通7000系で使われているブルーという案もありました。そのほかですと、ほとんど色を塗らずに白とピーチのラインのみとか...。

 

三浦

前面にほっぺを付けるという案もありましたね!

 

石川

ほっぺ(笑)!

 

小松

もう思いきってかわいくしちゃおうと(笑)。

 

石川

それすごく見てみたいです! ただアレですよね、先ほど三浦部長がおっしゃられたように鉄道車両は車と違って何十年と使われつづけるものですから、普遍性のあるシンプルなもので...、ということで。

 

小松

そうですね、少なくとも20年、30年と走りつづけるということを想定して、その中で地域に生きつづけるデザインとはどういうものなのか、っていうことを追求してきましたから...。まぁ自分自身で100点は付けられないデザインではありますけれども、日本の中でも屈指の地域に寄り添うことのできる車両ができたかなという自信はあります。

石川

もともと小松さんは「描き鉄」として活動されていて、最終的には実車のデザインも手がけることになったわけですが、この1000系デザインの話を聞いたときはどんな感じというか...、やっぱり「よっしゃぁ!」って(笑)?

 

小松

思いましたね、思いました(笑)。日本でも鉄道デザイナーって40名ていどという話を聞いていますので、今回はエクステリア(外観)のデザインだけだとしても鉄道デザイナーの中の一人に...、まぁなってしまったというか(笑)。

 

石川

いやいや、すごいですよ。

 

小松

その喜びの反面、鉄道車両、特に通勤電車の場合は地域に密着しなければならないデザインですから、とても難しいミッションでして、いかに地域の方に喜ばれて長く愛される車両を作るにはどうすれば良いかっていう...。まぁ、あるていど奇抜なものを作ればそれが「新しい」っていうのもあるかも知れませんが、通勤電車だとそういうわけには行かないので...。奇抜な車両をデザイナーの勝手で作ってしまうと地域を否定することにもなりかねず、鉄道に対する愛着の低下も招いてしまいますから、それだけは絶対に避けようと。地域を知って、地域を分かって、それを汲み取ってデザインをする難しさも知りましたね。

石川

この1000系はまた何編成か増備されるんですよね?

 

三浦

そうですね、最終的には6編成ですかね?

 

石川

じゃあ1編成だけ先ほどの「ほっぺ付き」の車両を、イベント用として(笑)。

 

小松

あー、それもアリですねぇ(笑)。部長、どうしますか?

 

三浦

ちょっと考え...、やるとはなかなか言いづらいんですが(笑)。

 

小松

お試しで貨物のテールランプを(笑)。

 

石川

飯坂温泉に浸かってほっぺが赤くなったよ、って(笑)。ぜひ遊び編成を1編成、ご検討よろしくお願いします...!